日本の労働生産性の低さは幕の内弁当的労働が原因

f:id:shazai:20190330194006j:plain

これまでアベノミクスで好景気が続いていると言っていたのがまやかしで、日本はどんどん貧しくなっていることが明らかになってきている。

出生率の低下による高齢化社会が進むとますますひどいことになりそうだが、それに輪をかけてマイナスの原因になっているのが、最近よく言われる日本の労働生産性の低さだろう。

www.jpc-net.jp

最初、”日本の労働生産性は先進国で最低レベル”というのを聞いて、

「勤勉で能力も高い日本なのになぜ?」

と疑問だった。

日本人は残業してまで長時間労働していて効率が悪い、定時に終われるよう効率良く働くべきという話もあるが、それで説明できる労働生産性の低さではないだろう。

いろんな要因があるとしても、もっともウエイトを占めるのは何だろう?

 

原因は給料が安いこと?

日本の労働生産性の低さは賃金が低いからだと専門家の人は言う。

だけど小さいながらも自営してきた経験からすると、そう単純なものではない。

 

人件費が高くなれば経営を圧迫するので、顧客に対する価格や料金が上がってしまう。

同じ商品やサービスなら顧客の購買意欲は下がってしまうから、かえって売上が落ちてしまう。

そしたら、結局、人件費を下げないといけなくなるが、最低賃金より下げられないので、いま問題になっているコンビニ経営のように人員を減らして一人ひとりの負担を増やすしかなくなる。

労働時間や仕事量が増えて労働生産性はあがらない。

 

うちのような零細では、こんな悪循環になるのが落ちだ。

 

大きな会社なら可能なのかもしれないが、結局、人件費が増えれば、その分昇給を抑えられて労働者の生活に余裕は生まれない。

たとえ最低賃金を底上げして一時的に給料が増えたとしても、物価も上がって財布のひもはゆるまないだろう。

 

高い給料や高い価格に納得しない雇用者・消費者

労働生産性の低い日本は、一体何が他の国と違うのだろう?

日本人の労働の品質が悪いわけではない。

効率が悪いという面はあるかもしれないが、徹底的に効率化されたフランチャイズのコンビニや飲食でも低賃金じゃないと成り立たないじゃないか。

 

 雇用する側の人間(僕もそうだった)は従業員に今より給料を払いたくない。

消費者は商品やサービスに今よりお金を出したくない。

 

今の賃金・価格が妥当だと思っているから納得できないのだ。

 

サービスにお金を払うことがなじまない

日本人の労働の質や商品の質は高いのになぜ納得できないのだろう。

普通に考えて、質が高いのだったらそれ相応に賃金や料金が上がってしかるべきだ。

 

 よくよく考えれば、日本人の労働の質を高めているのは仕事内容に無料のサービスが含まれているからだろう。

 

サービス残業や休日出勤、仕事を家に持ち帰る、なんてことだけじゃない。

B to BやB to Cに関係なく、本来の仕事以外に無料のサービスが求められる。

24時間営業、接待、時間外の対応、丁寧な対応。

日本の接客が”おもてなし”として讃えられて、インバウンドの増加につながっているのも従業員が提供している無償のサービスだ。

 

日本ではこれらのサービスに料金が発生することはない。

ホテルやレストランのサービス料くらいがせいぜいじゃないか?

 

好きでアメリカのドラマをよく観るが、向こうでは庶民が行くような小売店や飲食店では先に挙げたようなサービスはほとんどない。

小売は物を売るだけだし、飲食は料理を提供するだけ。

それでいてチップとしてサービス料を要求される。

日本のようなサービスが加えられたら、当然のようにその分の料金が加算されるだろう。

 

日本では風潮として、店のランクに関わらずサービス受けるのが当たり前で、わざわざ料金を支払うことはなじまないのだ。

このことはB to Bの分野でも似たようなものじゃないか。

 

根底にあるのは「お客様は神様」「スマイル0円」の文化

 こんな日本の風潮は古くは三波春夫が「お客様は神様」と歌った頃からか?

それ以前のことは知らないが、安保闘争やデモ、メーデーが活発だったような一般市民が不満をはっきり物言える時代に、そんな風潮はなかったんじゃないか。

 

時代が過ぎて、マクドナルドの「スマイル0円」がサービスは無料である風潮に拍車をかけたんじゃないかと思う。

 

今どき、スマイルは有料であるべきなのかもしれない。

 

笑顔や優しい言葉でお客を心地よくさせるスキルのあるスタッフを見つけたり育てるのはコストがかかるのだ。

 

キャバ嬢にホイホイされて気持ちよくなることには大金を払うのだから、いいサービスの店員に担当してもらいたいのなら余分な料金を払うことを受け入れるべきだろう。

 

日本で労働に期待されるのは幕の内弁当

 現時点では、日本では労働に対して対価以上のサービスが要求される。

外国の労働と比べたら、単品料理と幕の内弁当のようなものだ。

 

幕の内弁当はごはんとメインらしきおかずがあって、そこに加えてふりかけ、箸休め、サブのおかずなど様々な料理(サービス)が詰め合わせられている。

 

一方、外国は単品料理なのでその一皿が対価のすべて。

追加の料理(サービス)を頼めば、料金はどんどん加算されていく。

 

そんな感じだ。それでいて幕の内弁当と単品料理が同じ値段。

 

日本では本来、料金が発生して、世の中を巡るお金の流れを生むはずのサービスが、無料で提供されて一切お金の流れを生まない。

そんなサービス分の金額が差し引かれているのだから、日本の労働生産性が低いのは当然だろう。

 

専従性を尊重する社会にならないといけない

 日本では厳しい社会で生き残っていくためには、その道のエキスパートとなってオンリーワンにならないといけないとよく言われる。

だけど、本当のオンリーワンになれるのは限られた分野と限られた人や会社だけだ。

 

ほとんどは真似されてすぐに差がなくなる。

そこで、タダでサービスするのが当たり前の風潮の日本では、ライバルとの差別化のため容易に本業以外の部分でサービスを増やすことが行われる。

それに負けじとライバルがさらにサービスをしだす。消耗戦だ。

 

専門性のある職種でも同じような構図に変わりない。

 

本当に日本の労働生産性を上げるのなら、エキスパート(専門家だけでなく、単純作業を含めたあらゆる職業のエキスパート)が本来の仕事に専従できる社会に変わっていかないとだめだろう。

 

例えば、教えることのエキスパートである教師は授業で子どもに勉強や社会性を身につけさせることに専念すべきで、メンタルに問題のある生徒がいれば、エキスパートの心理カウンセラーが対応すべきだ。

暴力的な生徒やモンペがいればエキスパートの警備員や警察が対応すべきだろう。

 

飲食や小売などの接客業でも同じで、サービスを要求する人は高級な店に行けばいいんだ。

普通の店で、必要以上にサービスを要求するようなクレイマーのような輩は、やはり警備員や警察が対応すべきだろう。

 

上は極端な例だけど、日本人は多かれ少なかれ本業以外のサービスにコストを奪われて労働生産性が下がってしまっている。

だから、本来の仕事以外をしなくていい専従性を尊重する社会になっていくべきじゃないかと思った次第である。

 

経済のことはズブの素人だけど、二十数年自営業をしていて感じることだ。

普段こんな事考えないけど、書いたらなんかスッキリした。